はじめに

こんにちは。今日は「汚名」「恥辱」「偏見」を意味する英単語「 stigma(汚名) 」について見ていきましょう。この単語は社会的な偏見や差別を表す際によく使われます。そしてこの単語が実際に使われた、BBCが報じた電気を使わない冷蔵庫や蓮の茎から作る糸など、インドの地方で生まれた持続可能な「素朴な発明」が注目を集めているという記事も紹介します。

stigmaの意味

stigma(汚名) 」とは、「汚名」「恥辱」「社会的偏見」などを指します。この言葉は特に、貧困や職業に対するネガティブな社会的評価に関する議論で使われます。例えば、「その病気にはまだ社会的な偏見が残っている(There is still a social stigma attached to that disease.)」や、「彼の出身階級は偏見の対象になっている(His social class is stigmatized.)」などの文脈で使用されます。

実際に使用されている場面

さて、英単語「 stigma(汚名) 」が使われているニュース記事を紹介しましょう。BBCが2025年5月27日に報じた「Frugal tech: The start-ups working on cheap innovation」という記事の中に出てきました。

 

“But the income from making pots was meagre and the profession also came with social stigma.”

日本語訳: しかし、陶器作りの収入はわずかであり、その職業には社会的な偏見がつきまとった。

この記事では下記のことが書かれています。インド西部のモルビ出身、マンスク・プラジャパティさんは、幼いころから家族の陶器作りを手伝いながら育ちました。毎朝4時に起きて母親と一緒に粘土を採りに6マイル歩く生活でしたが、当時の陶器作りは収入も少なく、社会的な地位も低いと見なされていました。

2001年、インド西部地震によって家が壊れ、庭には割れた土器が山のように残されました。その時、地元の新聞記者が「貧しい人々の冷蔵庫が壊れた」と表現したことで、プラジャパティさんは電気を使わずに冷却できる「土の冷蔵庫」を作ろうと決意しました。

試行錯誤を繰り返し、借金を抱え家を手放すほどの苦労の末、4年かけて完成したのが「ミッティクール(MittiCool)」です。これは上部の水タンクから流れる水が粘土の壁を通じて気化し、庫内を自然に冷却する仕組みで、果物や野菜を5日間新鮮に保てます。価格は95ドルと手頃で、現在はインド国内300の店舗と、イギリス、ケニア、UAEなど海外にも輸出されています。

プラジャパティさんのような事例は、インド各地で広がりを見せる「素朴な発明(フルーガル・イノベーション)」の一例です。教育や資金に恵まれなくても、実生活に密着した課題を解決しようとする姿勢が評価されています。

同様に、北東部マニプール州のタナ村では、植物学者のビジャイシャンティ・トングブラムさんが、蓮の茎からシルクのような繊維を取り出し、女性たちと共にスカーフなどの製品を作るビジネスを展開しています。9,000本の蓮の茎から一枚のスカーフを作るには2カ月かかりますが、村の女性たちに月80ドルの収入をもたらしています。漁業以外の職を提供することで、地域の女性たちの自立支援にもなっています。

こうした地方発の起業には、資金調達の壁があるのが現実です。政府の助成金制度やベンチャーキャピタルの支援があるものの、情報やアクセスの不足で十分に活用されていないケースも多いとされています。

また、カナタカ州のヴィジャイナガルでは、視覚障がいのある農家を支援するための「スマート農業スティック」を開発中のギリシュ・バドラゴンドさんの取り組みも紹介されています。土壌センサーや気象データを活用し、音声と振動で農作業を支援するこの道具は、視覚障がい者の自立を目指すものです。現在はプロトタイプ段階で、展示会などを通じて支援を募っています。

語源の紹介

stigma(汚名)」の語源はインドヨーロッパ祖語の「 steig-(突き刺す、尖った) 」に由来します。この語は古代ギリシャ語の「 στίγμα(stígma) 」に発展し、もともとは「刺し傷」や「印(brand, mark)」を意味しました。そこから「烙印を押された者」=「社会的に不名誉な存在」としての意味に変化しました。

同じ語源を共有する単語

steig-(突き刺す、尖った) 」と同じ語源を持つ単語を見てみましょう。

stick(スティック) は、「steig-(突き刺す、尖った)」に由来し、「棒」や「突き刺す」といった意味を持ちます。 例文: He used a stick to draw on the ground.(彼は地面に絵を描くために棒を使った。)

extinguish(消す) は、「ex(外側へ)」+「steig-(突き刺す、尖った)」に由来し、「火を消す」「絶滅させる」といった意味を持ちます。 例文: Firefighters quickly extinguished the blaze.(消防士たちはすぐに火を消した。)

distinguish(識別する) は、「dis(離れて)」+「steig-(突き刺す、尖った)」に由来し、「識別する」「区別する」といった意味を持ちます。 例文: It is important to distinguish between fact and fiction.(事実とフィクションを区別することが重要だ。)

instigation(扇動) は、「in(中へ)」+「steig-(突き刺す、尖った)」に由来し、「扇動」「引き起こすこと」といった意味を持ちます。 例文: His speech led to the instigation of a protest.(彼の演説が抗議活動を引き起こした。)

さいごに

stigma(汚名) 」の意味や語源について理解できましたか?この単語は社会的な偏見を表す重要な言葉であり、その歴史的な背景を知ることで、より深く英語の語彙を理解できます。

それでは、今日はこの辺で。また次回の英単語解説でお会いしましょう。ではでは〜。

参考文献

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